English+Japanese

英語と日本語のこと。about English and Japanese and more...

英語と日本語で雰囲気が違う:Let it go / ありのままで

ちょっと古いですけど、今日はアナ雪の「Let it go / ありのままで」を聴いたときの英語と日本語の歌の雰囲気の違いを紹介したいと思います。

 

ディズニーの映画の歌を訳すのって、めちゃめちゃハードル高そうですよね。口の形をそこそこ合わせなくちゃいけないし、言葉の語数も全然違うし。なんか、あれこれ注文つけてきそうだし(笑)その制約の中で「Let it go」を「ありのままで」と訳すセンスとかもう脱帽です♡言葉の魔術師かよ~。って思います。

特に、この歌を初めて聴いたときに、日本語版のエルサはすごい日本人ぽいなー!と思ったのを覚えています。曲全体の意図するところは変えずに、キャラクターの個性が日本人ぽくなるって、言葉って面白いなー!と思ったんです。

 

今日は、なんでそういう風に感じたのか考察していきたいと思います。

 

 

 英語版の具体的な表現

 英語版の方が、表現が具体的ですね。頭に思い浮かぶ景色や心情が少し違ったものに見えてきます。

 

降り始めた雪は足跡消して
真っ白な世界にひとりの私
風が心にささやくの
このままじゃダメなんだ

The snow glows white on the mountain tonight not a footprint to be seen.
A kingdom of isolation and it looks like I'm the queen.
The wind is howling like this swirling storm inside.
Couldn't keep it in, Heaven knows I tried.

 

降り始めた雪は足跡消して

The snow glows white on the mountain tonight

not a footprint to be seen.

(今夜、雪が山で白く輝いている。見られる足跡は一個もない)

●二文目は(There is) not a footprint to be seen. が省略された形かな

この日本語訳良いですよね~。

 

真っ白な世界にひとりの私

 A kingdom of isolation and it looks like I'm the queen.

(孤独の王国。そして、私はそこの女王って感じね。)

この日本語訳も良い~♡「孤独の王国」を「真っ白な世界」と訳す。カッコええ

 

風が心にささやくの

The wind is howling like this swirling storm inside.

(風が、私の中で吹き荒れている嵐のように、唸っているわ)

●howl= ヒューヒューうなる
●swirl =渦巻いてあがる

心の中に嵐が吹き荒れているようですよ。「風がささやく」なんてそんな詩的な美しい感じではありませんね。英語版のエルサ、かなり荒れてそう!

 

このままじゃダメなんだと

Couldn't keep it in, Heaven knows I tried.

(秘密を留めておくことはできなかった。でも、天(神)は私が頑張ってきたって知っている)

●keep it in=それを中に留めておく(それ=エルサの秘密、かな?)

秘密がばれちゃいけない!という事にすごい一生懸命だったのが分かりますよね。めっちゃ頑張ったのにばれちゃった。でも、私めっちゃ頑張ったって神様は知ってるもん。(=私悪くない)。という心情がうかがえる気がします。

「風が、このままじゃだめだよ、ってささやくの」という日本語の表現が、なんて優しくポエムちっくなんだろう!って思いますよね?英語版のエルサは、結構グチグチしてます。(笑)

 

 

とまどい傷つき
誰にも打ち明けずに悩んでた
それももうやめよう

Don't let them in, don't let them see.
Be the good girl you always have to be.
Conceal, don't feel, don't let them know.
Well, now they know!

 

もうね。ここは日本語と英語で受ける印象が全然違う(^o^)

 ここは、英語版は、エルサが王様から言われ続けたこと、自分でも呪文のように繰り返し自分に言い聞かせてきたことが列挙されています。

 

とまどい傷つき
誰にも打ち明けずに悩んでた

Don't let them in (彼らを中にいれるな=事情を知らない周りの人々を近寄らせるな)

Don't let them see(彼らに見せるな=魔法を見られないようにしろ)

Be the good girl (良い子でいなさい)

You always have to be (the good girl)(いつも良い子でいないとダメだ)

conceal (隠しておけ)

Don't feel (何も感じるな)

Don't let them know (彼らに知られるな)

すげー、可哀そうになってくる…(´;ω;`)この追い詰められ方は可哀そうすぎる。Don't  feel とか、なんなん!?ひどくない?!どれだけエルサが追い詰められてるか凄い分かる歌詞ですね。日本語のほうでも、悩んでいることは分かりますが、ここまでの切迫感はないですね。もっとモヤっとオブラートに包まれている表現。

そして最後の一文。

 

それももうやめよう

Well, now they know!

(まあ、もうみんなにバレちゃったわ!!)

うん。英語版エルサ、なんか、吹っ切ってる(笑)日本語とは明らかにテンションが違う。

 

 吹っ切ってからのエルサが半端ない

 英語版のエルサ、吹っ切りました。そのあとのエルサのパワフルさが半端ない(^o^)

 

ありのままの姿見せるのよ
ありのままの自分になるの
何も怖くない 風よ吹け
少しも寒くないわ

Let it go, let it go.
Can't hold it back anymore.
Let it go, let it go.
Turn away and slam the door.
I don't care what they're going to say.
Let the storm rage on.

The cold never bothered me anyway

 

ありのままの姿見せるの

Let it go. Let it go. Can't hold it back anymore.

(力を解き放とう!もう自分の中におさえておくことなんてできない)

●Let it go =それを行かせる(それ=魔法の力 を解き放とう)
●hold it back =それをこらえておく(魔法を自分の中におさえこんでおく)

英語版は自分の中で膨れ上がった力を外に解き放ちたい!という強い思いが感じられますね。let は「自由にさせる」という意味ですので、力を自由にしてあげよう、という決意でしょうね。

 

ありのままの自分になる

Let it go. Let it go. Turn away and slam the door.

(力を解き放とう!(みんなに)背を向けてピシャリとドアをしめよう)

●turn away = 背を向ける
●slam the door = ドアをピシャリ!と閉める

訣別の思いが強い。「ありのままの自分になるの」なんて甘い感じじゃありません。もうね、他の人とは縁を切ります感が凄い。

 

何も怖くない 

I don't care what they are going to say.

(みんなが何を言おうが関係ないわ)

英語版エルサ、つおい!!もう、I don't care!!(どーでもいいわー!)です。翻って、日本語の「何も怖くない」というのはなんと絶妙な訳だろう!と思います。とても日本的な処理って思います。周りのことは「気にしない」「関係ない」という表現を使わずに、自分の中での自分との闘いとして捉えているような訳ですよね。サムライ的だわ♡

 

風よ吹け

Let the storm rage on.

(嵐を荒れ狂わせよう)

●rage =暴れる、猛威をふるう

rage は「激怒」とか「猛威」とかを意味するとても強い単語です。嵐をrage させるなんて、もう吹雪どこじゃないですよ。英語版エルサつおい!!!「風よふけ」っていう日本版のエルサかわいい♡

 

少しも寒くないわ

The cold never bothered me anyway.

(寒さが私を困らせたことなんて、どっちにしろなかったわ。)

●bother 困らせる

anyway (どんな方法にせよ、なんにせよ)という単語が入ってるのが、なんとも投げやりで面白いです。anyway も I don't care と同じような響きを持っていて「まあ、どーでもいいんだけど」「まーもうそれはいいんだけど」というような意味で使われます。

 日本版エルサは、打ちひしがれた日本の大人しいお姫さま。英語版エルサは怒りを解き放って羽ばたく戦士みたいな感じがする。

 

悩んでたことが嘘みたいね
だってもう自由よ 何でもできる
どこまでやれるか自分を試したいの
そうよ 変わるのよ私
It's funny how some distance
makes everything seem small.
And the fears that once controlled me can't get to me at all
It's time to see what I can do
to test the limits and break through.
No right, no wrong, no rules for me.
I am free!

 

 

悩んでたことが嘘みたいね

It's funny  how some distance makes everything seem small.

(ちょっと距離を置いただけで全てのことがこんな風に小さく見えちゃうなんて、どうやってそんな風になるのか考えると可笑しいわね)

●It's funny 可笑しいわね。(何が可笑しいのかがその後に続きます。)

●how どうやって、どのように

make O 動詞 =Oに(を)~させる

ここではmake everything seem small =全てのことを小さく見せる

 

だってもう自由よ 何でもできる
And the fears that once controlled me can't get to me at all.

(私をかつて支配していた恐れは私のところに全く近づけないわ)

●the fears が先行詞。that が関係代名詞です。

●me までが主語(私をかつて支配していた恐れは)

not at all を使って「全く~ない」と表現しているところ、「もう怒りになんて支配されるものですか!」という気持ちが感じられます。

※ここは英語版ではあとで出てくる内容が先に日本語で出てきているのだと思います

 

どこまでやれるか自分を試したいの
It's time to see what I can do 

to test the limits and break through.

(私が出来ることを知る時がきたわ。限界を試して自分を打ち破る時が。)

●It's time to~  ~する時だ


そうよ 変わるのよ私
No right, no wrong, no rules for me

I'm free

(私には、正しいも、間違っているも、規則もない!私は自由よ!

英語版、かなりパワーが漲っている文言ですね!

 

こっからの英語版エルサが凄いですよ。

 

' I 'と ' my ' の強さ

英語版エルサが爆走します。

  

ありのままで空へ風に乗って
ありのままで飛び出してみるの
二度と涙は流さないわ

Let it go, let it go.
I am one with the wind and sky.
Let it go, let it go.
You'll never see me cry.
Here I stand, and here I'll stay.
Let the storm rage on.

 

ありのままで空へ風に乗って

Let it go, let it go.
I am one with the wind and sky.

(力を解き放とう!私は風と空とともに生きる者だ)

ここで出てくる' I ' 「私」が醸し出す雰囲気が、なんともパワフルなんですよね。日本語版では、自分が主体になっている感じではないですよね。風が吹いてきたらそれに乗る、みたいな受け身というか。英語版は「私が」どういう人間か、ということを示している感じ。

 

次の2フレーズは英語と日本語の歌詞の順番が逆になっていると思われます。

音の都合ですかね。

 

ありのままで飛び出してみるわ

Let it go, let it go.
You'll never see me cry.

(力を解き放とう!私が泣いているのをあなたが見ることは二度とないわ)

※二度と涙は流さないわ の方の歌詞があてはまると思います

 

二度と涙は流さないわ

Here I stand, and here I'll stay.
Let the storm rage on

(私はここに立つ。そして私はここにとどまる。嵐を荒れ狂わせよう。)

※ありのままで飛び出してみるわ の方の歌詞があてはまると思います

 

ここ!!!ここが全然違う!!!

'Here I stand 'この響きの強さよ!「私」はここに立つんだ!という、決意。映画では、ここでちょうど、バーン!!って床を踏みつけて氷がバリバリー!ってなるところ。

ここを我の城とする!!というすごいパワーを感じます。

Here I'll stay. そしてもう二度とどこにも行かない。ここにとどまる!再び決意。

そして、嵐を巻き起こしたる!!!って決意。

とにかく決意がすごい。

 

冷たく大地を包み込み
高く舞い上がる 想い描いて
花咲く氷の結晶のように
輝いていたい もう決めたの

My power flurries through the air into the ground.
My soul is spiraling in frozen fractals all around
And one thought crystallizes like an icy blast
I'm never going back; the past is in the past!

 

冷たく大地を包み込み

My power flurries through the air into the ground.

(私の力が空を舞い、そして地中へ)

●flurry 風に舞う

'my' power 私の力です!私の力が空気中そして地中へと漲っていくんです。日本語版の方では、別にエルサの力は関係なさそうですよね?いえ。これは、エルサの力なんです。すんごいパワーを炸裂させてます。

 

高く舞い上がる 想い描いて

My soul is spiraling in frozen fractals all around

(私の魂が凍ったフラクタル図形に巻き上がっていく)

●spiral らせん状に動く

「私の」魂が、グルグルー!ってらせん状に、あたり一帯に、フラクタル(幾何学模様的なやつと思われます)柄に巻き上がっていくんですね。なんか、凄そうでしょ?

 

 花咲く氷の結晶のように

 And one thought crystallizes like an icy blast

(想いが氷の爆発のように結晶化する)

●blast 突風、爆発

「花咲く氷」ってなんて素敵な訳!!!

 

輝いていたい もう決めたの

I'm never going back; the past is in the past!

(もう二度と戻らない。過去は過去にあるの!(今とは関係ないの))

うん。英語版は、なんども訣別の気持ちを明確にしてますね。日本語版は全編を通して、あまり「訣別」のイメージはないですね。自分との葛藤がテーマって感じがします。でも英語版は、とにかく「昔の私」とは「おさらばだ」!という歌詞が何度も出てきます。

 

これでいいの 自分を好きになって
これでいいの 自分信じて
光あびながら歩きだそう
少しも寒くないわ

Let it go, let it go.
And I'll rise like the break of dawn.
Let it go, let it go
That perfect girl is gone
Here I stand, in the light of day.
Let the storm rage on!
The cold never bothered me anyway

 

これでいいの 自分を好きになって

Let it go, let it go.
And I'll rise like the break of dawn.

(力を解き放とう!私は夜明けの(太陽の)ように昇っていくのよ)

ここでも ' I ' の強さを感じます。私はこれから輝くのよ!という思いですね。日本語版の「自分を好きになって」がなんとも謙虚に響きます。

 

これでいいの 自分信じて

Let it go, let it go
That perfect girl is gone

(力を解き放とう!完璧な女の子はもういないわ)

Be the good girl! って言われてきたことを根に持ってます。(笑)

 

光あびながら歩きだそう
少しも寒くないわ

Here I stand, in the light of day.
Let the storm rage on!
The cold never bothered me anyway

(私は、光の中、ここに立つ!嵐を荒れ狂わせよう!寒さが私を困らせたことなんて、どっちにしろなかったんだから)

Here I stand 再び!!つおい!つおいぞ英語版エルサ!

 

 まとめ

いかがでしたか?全然違いますよね?(^o^)

どちらのエルサも私は大好きです。日本語版は、松さんの声もかわいいし、「守ってあげたい」「いいよ!もういいよ!頑張らないで!」って応援したくなる。英語版のエルサは、超カッコイイ!強い!よっしゃー!!イケーーー!!!ってなる。

 

言葉って面白いですね。単語のチョイスをちょっと変えただけで見えてくるものが変わっちゃう。もちろん、英語をそのまま一番近い訳で日本語にすることもできるのでしょうけど、その国の思考というか嗜好というか、を鑑みるとこっちの言い回しの方がしっくりくる、とかいうこともあるんだろうな!と思います。翻訳ってすごい仕事ですね。

 

では、日本語版と英語版、聴いてみて下さい♪

同じ画ですけど、エルサの性格が違って見えませんか?(^o^)

 

youtu.be

  

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